歩いている
近道発見
気分一新
「グレイ砂漠」は飽き飽きしていて
気持ちを変えたくて違う道に踏み込んだ
「グレイ砂漠」は灰色のアスファルトでうねうねと続く車道のこと
そのわきにある
自転車
有料レンタ乗り捨てスクーター(写真↓右端)
歩行者通路

この国の北から南をつなぐ道
この一帯を横切るとき
心が砂漠になる
さささぁーと砂の流れる音のように
かさかさする
車社会が急速に発展しているこの国
日本で車から離れたいという気持ちを抱き始めていて今
車が持てない事情とがうまくかみ合っている
この「グレイ砂漠」に沿って行けば
近いかな
間違いないかな
なんて続けていたけど
心はかさかさ
脇道の緑繁る通りに一歩踏み出して進んでみた
未知の道に進むのはちょっと怖い
危険な思いはしたくない
けどなにかある
なに?!
近いじゃない!
しかも木々のおかげで
朝日にガンガン当たらなくてもいい道じゃない!
しかも案外綺麗な歩道
人生の教えらしき発見をしたもんだ
さて
目的地にたどり着けば
人通りにぎやかだ
様々な国から来た人の中
世界の中に生きている
日本にいても
世界の中の一部は同じ
けれど違う
心の中の大きな沼
かつての勤め先果樹園にもちゃんと世界を感じる日常があった
海外からやってきた子どもたちを満たすことはできなかったと反省している
反省どころか
「日本の日々も良いね」と思う気持ちを心に残してほしいと
そういう日々を蓄える支えになりたい
海外からの子どもたちのそばにいた頃
悲鳴も嘆きもあきらめも素直に聞かせてくれたのに
それぞれの担任の先生にその声は受け入れられにくく
「余計なお世話」とすり抜けられた
国際理解教育・外国人生徒担当になれたときは嬉しかった
ある年度から
または職場が変わる毎に
役職の先生の「片付け仕事」なんだそうだけど
それなら
その仕事をくださいと
もっと強く言えばよかった
「家庭があって小さいお子さんがいて大変だろ?」
配慮だと言っていた
けれどその仕事は大変だと思ったことも
家族に大変だとも言われなかったのに
そういうもんなのかなと譲ってしまった
悔しくて無力で
反省しかなくて
それでも
心の中のオアシス
どこの国の子どもも優しい心を持っていて
「ARIGATO」の笑顔と日本語の手紙をくれて
悔い改めたいと決心して果樹園を離れた
ある年度に担任をした学級の保護者会で
夜勤が明けて次の仕事の合間に来てくれたパパの言葉に号泣したブラジル人少年の涙と
その後のがんばる姿が心に沁みついて離れない
「パパは毎日大変なのに僕のいいところを見ていてくれたんだね…」って
わたしまで感情が入り込んじゃって3人で泣いたんだ
この少年は公立工業高校を卒業している
もうひとり
フィリピン出身の少年は
我が家を家族と共演する演奏発表会に呼んでくれて
我が家も異文化を楽しむことができた
今では学校卒業後語学指導員に推薦されたと
わたしが出国する直前に果樹園で偶然再会したんだ
担当する小学校を何か所か回っているそうだ
外国人生徒たちと過ごす時間
日本語学習の時間は週2時間しかなかったけれど
一生懸命異文化の中の自分を受け入れていた
あたたかい時間だった
家庭科クラブに所属していたブラジル女子2人は
その後家政科の公立学校で
あの時よりも大きな作品に取り組んでいて
偶然にもわたしの最後の果樹園の目の前にある高校に通っていた
通学路途中
よくわたしのちっちゃな緑色の車を見つけて手を振ってくれていた
夢のファッションショー
自分の制作した衣装がライトを浴びてモデルさんが歩く日を夢見ていたから
きらきらしていたよ
心の中は共感の日々
今は我が家ごと
その子供たちそのご家族と同じ立場
体現している
ん ちがうな
あの時に出会ったあの子たちはこんなものじゃなかっただろう
なんとか日本のなかでやっていける方法はないかというすがる思い
せめて子供は…と頼りになる存在を探し求める家族の焦り
この家族だけじゃない多くの外国人家族との温かい出会いがあった
まとめてもっとがつんと寄り添ってしまえばよかった
「前例がないから動かないで」というお上からの言葉をもっと上手に柔軟に受け止めて
「前例」を見つけ出せばよかった
もしくは「前例」になる覚悟
共感し日本語学習に協力してくれる仲間は果樹園にもいて
本当に大きく心ごと救われていた
日本の子どもにも声がある
もうひとつは
「勉強はわからん」
「何で英語の勉強が要る?」
大人がちゃんと答えるのを待つ代わりに
いつかその子たちが
「あ このために学んだのか」と
自分で閃いて
そういえば自分頑張ってたわ~!という自分に必ず出会ってほしい
あの果実たち同士の学びなら
あの果実たちは
そんな瞬間にいずれ立ち会うはず
大丈夫
砂漠の中一歩一歩
わたし?
今は全然足りないんだ
大人の世界の会話や
ママとの子供に関すること
こちらの国でようやく盛んになり始めたエコ活動のこと
とっぷり果実たちと学んだことを
英語で伝えるチャンスが何度も訪れるんだ
みんなで学んだから必死で伝えている
それと
仕事場でのやり取りに返す言葉
まだ足りない
けれど
負っけるもんか
日本の桜の四月と同じく
何かが始まって動いている日々

現役ナース御年71歳より
幼少時代を過ごした桜並木写真が届く
by citron